写経漫画 宇宙観4です

墨をする

さて、いよいよ写経を書いていきます。

その前に、墨をすりましょう。

墨は、「の」の字を書くように、約15分ほど、優しくゆっくりと墨をすっていきます。

徐々に、墨のにおいが伝わってきます。

この瞬間が、私はとても好きです。

墨がお経を唱えている気がするのです。

だんだんと黒くなり、深くなり、墨のにおいが漂う。

さあ、これから、これから、マラソンランナーがスタート地点で合図の号砲を待っているかのようです。

決して、急いですらないでください。ゆっくりとすっていくことが大切です。

もうすでに写経は始まっているのです。準備をすることも、墨をすることも、お写経の行為ですね。

書家の方は、墨の濃淡をとても大切にします。

あなたの心を表現するときに、その濃さや薄さで伝わるものがあります。

文字をちょっと見ただけで、どんな方が、どんな思いを込めて書いたか?

一瞬にしてわかってしまうように・・・

正座をして心を整えていく

ここでは、正座をすすめていますが、決して正座でないといけない事はありません。

椅子でも構いません。

まずは、呼吸を整えていくことです。

深呼吸をしましょう。

座禅のように、まずは、自分の息を全部吐き出すのです。

肺の中の空気をすべて吐き出してみてください。

フ―と全部を吐き出すのです。

すべてを吐き出すと、次は吸うしかありません。

自分が求めようと、求めなかろうと、勝手に体が息を吸ってくれます。

自分の呼吸を感じてみてください。生かされている自分を見つめてください。

こうして、生かされている。そして、今仏法に巡り合うことができる。

お経については、別の項目で説明しますが、開経偈というお経にはこのように説かれます。

百千万劫難遭遇  百千万劫年という途方もない長い時間を過ぎても、仏法に合うことが出来ない。

そんな貴重な教えに、今、巡り合うことが出来た。こんなに素晴らしいことはないというお経です。

壮大な、時間の経過の中で、自分の存在を宇宙的視野で見つめてみるのです。

私一人はちっぽけな存在かもしれませんが、延々と続く命のバトンを受け継いできた。そのバトンには、無数の遺伝子と共に、様々な心もつながっている。

こうして、自分という存在を見つめることがお写経の始まりとなります。

書き出しの一字

書き出しの一字は、緊張するものです。

2500年ほど前のお釈迦様の教えを、私が受け継ぎ、それを書写しようとしている。

記念すべき一文字目ですね。

般若心経であれば、摩訶般若・・・ではじまります。

摩訶とは、マハーといって「偉大なる」という意味があります。

まさに、偉大なる教えを今は私は、受けるのである。そしてほかに伝える写経をするのである。